BRUTUSが山特集。以前にも標高2000m以上のリゾートとか、最近では「山と経験」という巻末コラムがあったりして、「山」をおしゃれアイコンとらえた中での、当然の成り行きの特集。今、代官山で開催している「Mountains of God」はほぼ、この雑誌企画とのタイアップ。その他、服部一成の作品もあったが、昨年Gallary Trax (山梨県北斗町)での展示作品とほぼ変わらず。Gallary Traxでは、その空間の雰囲気と完全に同期していてとても印象深かった。
で、雑誌に話を戻すと。巻頭のホンマタカシの写真がとてもかっこいい。実際は、ラブホテルのへんてこ建築、東京郊外、北欧と、これまで幾度となく変貌してきた「新たなネタ」として、山に白羽の矢を立てたのだろうが。 メンヒ、マッターホルン、アイガー北壁などをパンフォーカスでパチっととっていて、山の細部(リッジ(稜線)やルンゼ(谷))を近くによって目でなぞることができる。
巨匠系山岳写真家も多くいるが、それらの多くは、広大なスケールのスタジオワーク的だと思う。山奥に入り込んで、光がいい具合に山に当たる。その一瞬を辛抱強く待って、パンフォーカスで捉える。対して、ホンマの写真はこれだけのスケールの物を写しても、やはり私小説的なスタイルを貫いているような気がした。意識が山ではなく、写真を撮影した写真家の立ち位置にある。ヘリでの空撮もあったが、基本的には山に入って撮った訳ではなく、あくまでも、ツーリストとしての私=ホンマが撮影したといった感じだ。(登山をして撮影したという、体育会系汗臭さは皆無。)
話は変わって、田淵行男(※)の焼き直しみたいな写真ページがあって、寅彦という謎の写真家が出てくるが、私見では寅彦はホンマタカシ自身ではないかと思う。僕自身も八ヶ岳には冬の間だけでも7,8回は行くし、もっと足しげく通っている山岳会の仲間や、山小屋のご主人に聞いたが、2メートル近い巨体のカメラマンを目撃したという話は一切なかった。「我が愛八ヶ岳 ああ」の見出しのタイポグラフィが嘘くさく感じるほど、写真は冷淡な取り方だし。。
※田淵行男
登山家にして、高山蝶研究家。写真家。エッセイスト。晩年まで安曇野に暮らし、穂高町に記念館もある。
リンク: 田淵行男記念館
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